ある晩から、猫が家にやってくるようになりました。
裏庭の工具棚の下に、シャム猫が子猫を2匹連れてうずくまっているのを父が見つけて、
ためしに晩御飯の残りをあげているうちに、
子猫を安全などこかへ置いて、母猫だけ毎晩やって来ました。
でも、そのシャム猫ときたら、びっくりするくらい 馴つきません。
ガラス戸ぎりぎりまで座り込みをして待っているくせに、こちらが開けるとフーとふく。
お皿を出すと、目の前では食べずに 美味しいものだけくわえて5分いなくなるのです。
キャットフードを買ってきた父のさみしそうなこと・・。
それを3回ほど繰り返します。ああ子猫に運んでいるのだな。
それにしてもこんなに鳴かないものかしら。いくら野良でも・・
「あなたも食べてね」と言うと、じっとしばらくこちらを見てからゆっくり皿に顔をつける。
野良猫であり、気位の高いシャム猫であり、母親である。
頑としてその姿勢を崩さずに、子猫のためにご飯をとりにくる彼女を見てるうちに、
ちょっと気になってきた。彼女なりの意思を尊重してみよう。
距離を守りながら、晩御飯を出す日が続きました。
3月ほど経ったある晩、歌の練習をしていて ご飯を出すのが遅れました。
ガラス戸をガンガンやる音がする。叩いている!
急いで開けると顔にしわをよせてまたフーと吹かれたので、
そんなに怒らなくてもいいじゃない、遅れるときもあるのよ、
大変なのはわかるけど たまには子猫の顔でも見せにきたらどう?と
よくわからない主張で ちょっと怒って言い放ってしまった。
シャム猫は前足をお腹の下に入れてうずくまり、眼を閉じてじーと動かなくなりました。
私の話を聞いてるのか、聞き流しているのか・・
次の日の晩、父が嬉しそうに呼ぶので裏に行ってみると、
シャム猫は 少し大きくなった子猫2匹を連れて来ていました。
そういえば、この親子が来てから 父とも前よりよく話すようになったなあ。
「連れてきてくれたのね ありがとう」とシャム猫に言うと、
青い眼でフンとやったように見えました。
彼女たちは今日も来ています。